「書作」という名称は私が命名したが、自分ではよい名だと満足している。「作書」でも字義は同じであるが、「書作」のほうが音感がよい。
つよい、力のあるゆたかな書を作ろう。のびやかで、心のとどいた書を作ろう。リズムに乗った書を作ろう。しずかで、気分の遠い書を作ろう。子供のようなあどけない書を作ろう。清く、澄んだ書を作ろう。烈しく、動きのある書を作ろう。筆の力が紙の中にめりこんで、落着きのある書を作ろう。流れのある、ためらいや、よどみのない書を作ろう。形のととのった、それでいて固くならない書を作ろう。大きな心の見える書を作ろう。細かな部分にとらわれず、大まかな書を作ろう。生き生きとした書を作ろう。現代の人々に親しめるような書を作ろう。
これから毎月、皆さんから送ってくる作品を見るのが楽しみだ。その中から前にあげたよい書を発見し、これを「書作」をとおして広く世の中に知らせ、作者に自信と勇気を与えてあげたい。勝手、気ままに書いて作品を送ってよこしても、おそらくよい成績はとれない。ちゃんとねらいを定めて、「よい書を作る」、そのねらいをあらわすために努力した人が上位の成績を得るであろう。くふう、研究を、たゆまず努力する人が勝利を得るであろう。
現代の書道界で名家といわれている人たちは、その大部分は、その昔に競書にはげんだ人たちである。人の心は皆同じである。インクの香のつよい雑誌を開いて、先ず自分の級位のところを見るのは、今も昔もかわらない。そして自分の名の位置で喜ぶ人と、悲しむ人とが生じる。三ヶ月や、半年の努力で、自分の期待するような段級に進まないからといって、怠け心を起こすようでは将来大物にはなれない。すべては努力の持続が結果と結びついて行く。このように出品者の正しい力の測定をやる審査の責任は大きい。私も審査に加わるが、この点「書作」の審査員は、己の心をむなしくして、正しく、公平な審査をすることを申しあわせている。この雑誌の特徴は、第一に審査の公正をモットウとしていくつもりである。よい参考手本を掲げることも、よい記事をのせることにも努力はするが、何といっても審査問題にこの雑誌のいのちがかかっている。
書壇の時事解説や、論文や、古典の解明なども、書を学ぶ者にとっては大切な記事である。けれども、これらについては専門の雑誌があるので、本誌では力を入れない。本誌の使命の最大なものは権威ある競書の審査にあることをご理解いただきたい。
一人よりは三人、三人よりは十人でグループを作って研究にはげむことが長続きし、また競いあって上達するこつである。会員の各位にこの誕生したばかりの「書作」を愛し、知友や、門人たちに広く紹介し、会員の増加にご協力くださるようお願いする。
「書作」の創刊を発表して僅々二ヶ月に満たないが、爆発的な反響があり、すでに五千名の会員申込がある。それだけ本誌に寄せられる期待が大きいわけであるので、関係者一同大はり切りで編集に、審査に当っている。ご協力下さった方に対し誌上をかりて厚くお礼申し上げる。
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